●線つなぎテスト法(満6歳児の例)
TOP GUIDE
線つなぎにみる、
子どもの集中力と知的能力
by
はやし浩司   

【テスト方法】

以下のような紙(A4サイズ)を用意して、上下ななめに
線をつながせます。
今回のテストでは、制限時間を3分としました。

【判断方法】

年長児(平均、満6歳児)の作品を並べておきますので、
それを見ながら、ご家庭で判断してください。

【注意】

●テスト中は、子どもに何も言ってはいけません。
●テストが終わったら、「よくできましたね」と言って終わり、
それ以上、何も言ってはいけません。
●またこのテストの結果が悪かったといっても、このテストを
繰り返ししても意味はありません。
この作業を繰り返したからといって、集中力がますとか、思考が緻密になるとか、
そういうことはありません。
●なおこの時期、数か月単位で、子どもは大きく変化していきます。
そういうことも考えながら、お子さんの作品を判断してみてください。

(以下、満6・0歳児の作品例)
ここにとりあげた作品例は、2005〜6年に
かけて、私が指導した子どもたちのものです。

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●1行目から線が大きく乱れています。
●3〜4行目になると、さらにそれが大きく乱れているのがわかります。
●知的能力(集中力)が、かなり劣っている子ども(6歳児、以下6歳児)の作品です。

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●6歳児にしては、1行目から乱れが見られます。
●3〜4行目には、それがやや激しくなっているのがわかります。
●集中力に欠け、その分だけ、知的緊張感を長く持続できないことを示しています。

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●能力的にもたいへん恵まれた子どもの作品です。
●線が静かに落ち着いています。
●途中から、線が薄くなっていますが、疲れによるものです。
しかし線そのものは乱れていません。
●こまかい乱れは見られますが、こうした乱れは、むしろ好ましいものです。

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●こまかい乱れが見られます。
●やや気分的な子どもの作品です。
●全体を遠くからながめて見ると、(気分的なムラ)がわかります。

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●1行目から大きく乱れているのがわかります。
●4行目で、(時間にすれば30〜40秒あたりで)、集中力が消えているのがわかります。
●ものの考え方が粗雑で、乱暴な考え方をする子どもの作品です。
●知的能力も、この年齢にしては、かなり劣っています。

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●静かで落ち着いた印象を与えますが、それがそのままその子どもの性格を表しています。
●上がり線が細く、下がり線が太いというのはクセで、問題、ありません。
●こまかい乱れは、心配ありません。

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●落ち着いた印象を与えます。
●慎重に作業するタイプの子どもの作品です。
そのためどうしても作業能力が落ちます。
●もう少し伸びやかにやってもよいのでは……と思います。

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●乱れと言うより、乱暴な線が目立ちます。
●知的能力はふつうですが、論理的思考が苦手な子どもの作品です。

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●線が細いのは、鉛筆の濃度が子どもの筆圧に合っていないことを示します。
●乱れは大きくありませんが、作業が遅いです。
●全体に萎縮性が見られる子どもの作品です。。

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●6歳児では、かなり能力的に恵まれた子どもの作品です。
●乱れもなく、落ち着いています。
●線の濃淡が気になりますが、これは軽い気分の乱れを表します。

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●5行目で大きく乱れていますが、そのあとまた持ち直しています。
こうした繰り返し(乱れ→復帰→乱れ)は、どんな子どもにも見られます。

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●やや作業能力が劣っていますが、線の乱れも少なく、平均的です。
●要領をつかむのに時間がかかる子どもの作品です。
(要領をつかむのが得意な子どもは、早い段階で、書き順、くせが定型化します。)

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●作業能力はすぐれていますが、乱れ方がこまかいところで激しいのがわかります。
●(乱れ)→(復帰)を繰り返しているのがわかります。

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●2行目で小さな乱れが見られ、5〜7行目で、大きな乱れが見られます。
知的能力にやや遅れが見られる子どもの作品です。


(ご家庭で利用されるときは、以下を、
そのままコピーして、お使いください。)



●子どもの集中力


 集中力と子どもの知的能力は、表裏の関係にある。

集中力のある子どもは、すぐれた知的能力をみせる。
このタイプの子どもは一度何かに集中し始めると、他人を寄せつけない気迫に包まれる。

一方、集中力のない子どももいる。
何ごとにつけあきっぽく、しばらくするとすぐ、「退屈〜ウ」とか、「つまらな〜イ」とか言い出す。

 そんなわけで、つまり知的能力を高める方法があまりないのと同じように、集中力をつける方法というのも、それほどない。
あるとすれば、集中力をなくさせるようなことをしないという消極的なものでしかない。
たとえば無理、強制、条件、比較などを日常的にして、子どもからやる気を奪う。

慢性的な睡眠不足状態にするなど。
言いかえると、子どもの集中力を最大限引き出すためには、できるだけこうした方法を避けるということになる。が、それでも集中力が続かないとしたら……。答は簡単。あきらめる。
それがその子どもの能力の限界と知ったうえで、あきらめる。

 よく誤解されるが、サッカーならサッカーで、すぐれた集中力をみせるからといって、知的な面でも集中力があるということにはならない。(もちろん両面ですぐれた集中力を示す子どももいるが……。)

脳の中でも運動面をつかさどるのが、大脳半球の中の運動野(中心前回)という部分。
知的能力をつかさどるのが、連合野という部分。連合野は人がサルから進化する過程でとくに発達した部分であり、運動をつかさそる運動野とはまったく別物と考えるのが正しい。

 ただ教育的には方法がないわけではない。
子どもの方向性を見きわめたうえで、うまく好奇心を引き出しながらそれに集中させるなど。

算数はきらいでも、虫が好きで、虫のこととなると夢中で調べる子どもは、いくらでもいる。
あるいは英語には、「楽しく学ぶ子どもはよく学ぶ」というのもあるが、子どもを好きにさせるという方法もある。

まずいのは、満腹状態の子どもに、さらに食事を与えるような行為。
集中力がなくなって当然である。

 この集中力がなくなると、子どもは、フリ勉(まじめに勉強しているフリだけをする)、ダラ勉(ダラダラと身をもてあます)、時間ツブシ(つめをほじったり、やらなくてもよいような簡単な問題ばかりをする)がうまくなる。

こうした症状が出てきたら、できるだけ早い時期に、家庭教育のあり方を猛省したほうがよい。
小学低学年で一度そういう症状を身につけると、なおすのは容易ではない。